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株式会社内田洋行様 幅広い事業で活躍する“自主自律型人材”の育成とは?「内田洋行の人材育成」

幅広い事業で活躍する”自主自律型人材”の育成とは?「内田洋行の人材育成」

株式会社内田洋行様

1910年(明治43)年に創業し、2025年に115周年を迎えた内田洋行様。時代とともに事業内容を進化させながら、一貫して、民間企業、官公庁、自治体、教育機関のお客様の「働く場と学ぶ場の革新と創造」に取り組み、その経験と知見を蓄積し続けてきました。変革を担う人々のための革新と創造を支えるのが内田洋行グループの使命。現在の売上構成比は、ICTやデータ活用を核とした大手民間市場および小中高大学と官公庁・自治体を中心とする公共市場のICT関連ビジネスが全体の65%、空間設計等の環境構築関連ビジネスが35%となっています。今後は「人とデータ」を中心に据えたICTの活用を通してさらなる事業変革を目指しています。その中核を担うのが、グループ内で人材育成をリードするウチダ人材開発センタです。多様な研修サービスを提供するだけでなく、企業文化の醸成や次世代を見据えた人づくりにも力を注いでいます。
本日は人事部の佐藤様、ウチダ人材開発センタの村山に内田洋行およびグループ企業に展開する人材育成の考え方や具体的な取組み、今後の展望などについてお話を伺いしました。

株式会社内田洋行
経営・人事・総務統括グループ人事部長兼企画課課長 佐藤 一直 様
ウチダ人材開発センタ 
ラーニングデザイン部長 村山 裕介(内田洋行 人事部次長)

お二人の現在の職務、役割について教えてください

佐藤様
内田洋行で人事部長を務めています。長く人事関連の仕事に携わり、主に人事制度の企画業務を中心に人材の採用や労働組合の対応なども行ってきました。部長就任以降は、人材育成から給与計算、福利厚生などまで、人事関連業務全般における責任者として仕事に従事しています。

経営・人事・総務統括グループ人事部長兼企画課課長 佐藤様

ウチダ人材開発センタ ラーニングデザイン部長 村山(内田洋行 人事部次長)

村山
ウチダ人材開発センタのラーニングデザイン部長と内田洋行 人事部次長を兼務しており、主に人材育成を担当しています。元々はグループ会社のウチダ人材開発センタに籍を置き、研修サービスの提供を通じて約15年間人材育成に従事してきました。2024年からは内田洋行人事部にも籍を置き、今後の人材育成に向けた計画策案を担っています。ウチダ人材開発センタの事業である研修サービス提供の枠を超え、次世代に向けた人材開発を力強く推進していく役割を求められていると考えています。

貴社及び内田洋行グループの人材に対して期待することを教えてください

佐藤様
当社は商社であり、戦力の中心はやはり「人」。人材に対する投資は、会社を強くするための根幹の部分です。メーカーさんが開発投資にどれだけ注力するのかということと同様、内田洋行にとっては人に投資をすることが大事。会社の体力を向上させるために何をするべきかと考えたとき、最終的には「人を育てる」というところに行き着きます。「会社の資産=社員」という考え方で、いかに育て、仕事に取り組んでもらうかが重要だと考えています。
村山
内田洋行グループが事業を展開する市場は、民間市場から公共市場まで多岐にわたります。それにともない社内における職務や職種も、営業職からシステムエンジニア職(以下、SE職またはSE)、デザイナー、工事にかかわるスタッフまで多種多彩。人材育成に関しても様々な観点から取り組む必要があり、そこに奥深さと面白みがあります。例えば、オフィス環境を構築するにしても、設備やITネットワーク、ソフトウェア、アプリケーションまでをワンストップで提供できるのが当社の強み。グループが有するリソースを複合して、お客様満足度を最大限まで高めていけるような幅広い視野と高い視座をもつ人材を育てていきたいと考えています。

貴社の人材育成体系の特徴を教えてください

佐藤様
時間と投資を最も費やしているのが、入社から5年目までの社員に向けた研修ですね。社員の尊厳を重んじる当社では「自主自律」をキーワードに育成プログラムを考えており、それを醸成するための最重要期間と捉えています。人材育成の分野でよく言われる「自律型人材」とは、言い換えれば“自分で成長できる人材”ということ。「横展開が広く、多くのリソースを有する会社」だからこそ、社員には事業を深く理解し、リソースを使い切る力が求められます。お客様のご要望にお応えするためには、社内だけでなく、ときには社外まで広く目を向け、必要なものを探してくる視点が必要です。自ら情報収集し、主体的に行動できる自主自立の考え方を若いうちから育めるよう、力を入れています。
村山
具体的なプログラムとしては新入社員研修と、入社2年目から4年目の若手社員に向けて半年に1度基礎力強化を促す研修を実施しています。一歩一歩着実に成長していくためには、自らの成長の過程をしっかりと把握することが大切です。半年ごとにセルフアセスメントシートを書いてもらい、研修受講で得たものと今後に向けての自分の課題を明確につかめるようにしています。
佐藤様
これは、若手社員から“成長実感が得られない”という声が多く寄せられていたことを受け、自らの成長の課題を可視化するために取り組んでいるものです。日常業務を遂行しながら現状を洗い出し、立ち位置を把握するのは簡単なことではないため、研修という形でしっかりと場を用意して振り返りを行っています。研修には、同期社員が事業部や職種の壁を越えて一堂に会するため、刺激を受ける良い機会にもなっています。
村山
成長実感が得られないことで自分は成果を出せていないのではないかと悶々とするうち、つい隣の芝生が青く見えてしまうことも多い。定期的に場を設けて同期社員と交流を深めながら自らの成長に目を向け、進みたい方向を見極めていくことができれば、離職のリスクを最小限に抑えることができるのではないでしょうか。自らの成長と能力値の可能性を実感することが明日への鋭気を養い、次はこの部分を強化しよう、もっと頑張ろうという気持ちにもつながっていくのではないかと考えています。

新入社員研修ではどのようなことを大切にしていますか

村山
最も大事にしているのは、新入社員に良いスタートを切ってもらうことです。良いスタートを切るためには、自社のことを好きになってもらうことが非常に大切だと思います。毎年、60~70名ほどの新入社員が入社しますが、入社前は会社の一部しか知らない人がほとんどです。それに対し、内田洋行が幅広い事業を展開し、社員も様々なことにチャレンジできるということをまずは知ってもらいたいですね。

佐藤様
入社段階では内田洋行の特定の事業分野に興味を示し、その分野への配属を望んでいる人が多いと思います。しかし実際は、新入社員が想像するよりずっと会社の全体像や裾野は広く、事業部の数だけでも10以上。研修では各事業部長からそれぞれの役割や仕事内容を詳細に説明し、会社事業の全体像を把握してもらうことから始めます。新入社員にとっては初めて知ることばかり。内田洋行という会社のユニークな側面や考えもしなかった可能性に気づき、希望の方向性が変わる社員も少なくありません。そのように事業の全体像を把握し、自らの展望に関しても視野を広げてもらうことが入口としては非常に大切です。
村山
社会人としてスタートするためのビジネスマナーやマインドセットにももちろん力を入れていますが、研修の前半は“自社を知る”ということにたっぷり時間をかけています。会社に関する知識をひと通り学び、研修後半では、5年後、10年後を見据えた商品やサービス展開をテーマとし、どのように携わっていきたいのか、どんなことを実現してみたいのかを考える演習も行います。
当社には、先輩たちの手でアップデートされて引き継がれている「内田洋行Wikipedia」というものがあります。“内田洋行ってこんな会社だよ”というリアルを社外秘情報も含めてわかりやすくまとめたものです。前年度に入社した先輩社員が配属後にアップデートし、次年度の新入社員研修では更新版を利用します。将来のビジネスモデルを考える演習の際は、それを見れば社内にどのようなリソースがあるのかすぐにわかりますし、研修中に先輩社員と対談するときは、どの事業部でどのような仕事に携わっているのか、予習した上で臨むことができます。
最終的には、それら演習を通じて「よし頑張ろう!」という気持ちになってもらうことが、新入社員研修の最大の意義です。

配属後の職種別研修や人材育成について教えてください

佐藤様
配属後は各事業部・職場でのOJTが、人材育成の核となっています。その中で特にOJTとOFF JTの連携ができている領域は、若手SE向けのプログラムです。SE職に関しては配属後も実務には就かず、ウチダ人材開発センタの研修を3カ月間、受けてもらいます。
村山
文系出身のSE職希望者が多いため、“プログラムは書けません、コードも読めません”という新入社員も珍しくありません。そのような初心者も含めSE職は3カ月間、みっちりと研修を行うことからスタート。研修後も1年半ほど各部署を回り、民間市場、公共市場、文教市場など各市場別にネットワークの仕組みやアプリケーションの知識をOJTで学びます。その間もスキルアップを図れるようOFF JTの研修を提供し、知識の集積をサポート。SE職は初期段階で身につけなければいけない基礎知識が多い職種なので、最初の3年間の育成プログラムは特に充実しています。

佐藤様
一方、営業職に対する人材育成は各部署でのOJTに依存している部分が大きく、全社を通じた体系的な人材育成プランを構築しきれていないのが現状です。営業も非常に専門性の高い分野なんですよね。配属分野のスペシャリストは多くいますし、必要なスキルや情報を体系づけて研修している事業部もありますが、なかなか横展開するのが難しい職種ではあります。
村山
プレゼンテーションスキルやコミュニケーションスキルなど、個々のスキルに関しては研修を実施しています。ただ、具体的な営業スキル、営業方法となると各事業部あるいはお客様ごとに大きく異なるため、現場で求められるスキルを解析し、体系的に紐づけるのが非常に難しい。自主自立の精神を強化しながら、研修で得たスキルを一人ひとりが効果的にマッチングさせ、OJTを通じて知見を深めていってもらいたいですね。
佐藤様
自己成長の観点で言うと、同じ分野、職種で7、8年仕事を続けていると、大体のことができるようになり、このまま同じ場所で専門性を深め続けてよいのか、違う分野でキャリアを広げていくべきなのかと、悩む時が一度は訪れます。その際に提示する多様なキャリアステップ、ロールモデルを増やしていくためにも、選択肢の幅を広げていく努力が会社としては重要。そうは言っても、社員全員に対して一律にジョブローテーションを実践すれば、知見の継承やお客様対応の面でデメリットが生じます。一人ひとりの希望に沿ったきめ細かな対応をしていくことが、現状に即した最適解かもしれません。
他部署の業務内容を知る、横のつながりを増やすという意味では、前述した若手社員向けの研修が良いツールです。同期同士なら忖度なく深掘りできるため、担当業務以外の知識を広げる機会としても大いに活用してほしいですね。

管理職に対する人材育成について教えてください

佐藤様
管理職候補に対する研修は、外部ツールで適性を客観的に評価した上で、各事業部からの推薦も鑑み、候補者を選定することからスタートします。管理職としての素養を備えているかどうかについては、定量的な評価軸だけでなく、研修を通して垣間見える特性や資質も重視するのが当社の特徴です。例えば、営業成績が良くても、管理職の適性があるとは言い切れません。数値や成績では測れない部分を研修で評価し、受講者当人には役職を担う覚悟を養う機会として研修を提供しています。
マネジメントの道に進み、課長として初めて管理職に着任する際は、管理職として必要な知識や当社のルールを学ぶ研修を2日間受けてもらいます。それに加えて、管理職とはそもそも何か、という原理原則に関する見識を養う2泊3日の研修を、着任初年度と、振り返りのために2年目にも用意しています。
村山
キャリアアップして課長同期となった人たちが集まり、2年間で10日間ほど、研修を受けます。制度面の知識を身につけ、マネージメントの原理原則を覚え、コーチングの演習を行ったり、現状について互いに議論を交わしたり。それらを通じて、約2年かけて適切かつ自分なりのマネージメントスタイルを構築していきます。

シニア向けの人材育成やDX人材の育成に関する現状を教えてください

佐藤様
実は内田洋行で今最も社員数の多いゾーンが50代。現場で大きな戦力になっているのもこのベテラン社員の方々です。この層に向けて約10年前から、「シニア向け研修」というものを提供しています。対象は、55歳以上。役員以外は事業部長から非役職者まで全員を対象としています。再雇用で大半の方が65歳まで働く現状を踏まえ、先々10年間、どのような意識で仕事をしていくのか、ということを考えていただくための研修です。具体的には、自分の強みを再認識し、まだまだ自分にできることがたくさんある、と気づいてもらうことに力点を置いています。
村山
私からはDX人材の育成に関する現状をお話しさせていただきます。
当社の使命は、人の働く場や学ぶ場の変革を支えること。「ICT事業を通じて様々な変革を行ってきた」という自負もあり、内田洋行がお客様の情報基盤を構築し、それらの利活用を推進する企業や学校、自治体の組織に向けてウチダ人材開発センタがDX人材育成のサービスを展開することが増えています。最近の傾向としてお客様向けには生成AIを組み込んだ商品なども提供していますが、社内を見るとまだDX途上です。しかし、ITリテラシーやITテクノロジーの進化を鑑みると急ピッチで推進しなければならず、既に待ったなしの時期に差し掛かっていると感じています。そこで、まずは各人が持つIT・DXに関するリテラシーとスキルを顕在化し、推進リーダーやそれを支えるサポーターを見定めることから始めています。
ウチダ人材開発センタが独自に開発したサービス「i測」は、企業に属する個々の社員が持つスキルやリテラシー、行動特性を可視化し、育成と配置の最適化を支援する診断サービスです。特に、DX推進において重要な「ITリテラシー」や「デジタル活用力」にフォーカスして、社員一人ひとりの“現在地”を客観的かつ多角的に測定し、定量的なデータに基づいて把握することが可能となるため、多くの企業様で導入が進んでいます。内田洋行では100%に近い社員が受講済みです。その結果をもとに各事業部のトップと打ち合わせをし、顕在化したリソースをどう配分し、どのような施策を進めていくのかを検討中です。社内の情報インフラの責任者を中心にライセンスを取得し、試行し始めている商品もあります。DXに求めるものといえば、やはり情報収集と処理スピード。2つの観点で人材育成とDXを推進していけば自ずと適切な改革が実現され、お客様へ提案するサービス面でも新たな広がりを生み出していけるのでないかと考えています。

最後に、ウチダ人材開発センタへの要望や今後に期待することを教えてください

佐藤様
内田洋行の研修プログラムの大半をウチダ人材開発センタに主導していただき、企画業務も村山部長に担ってもらっています。グループ会社という近しい距離感で実情に合うプログラムを提供していただけるのは、やはり心強い限りです。お客様に寄り添い、最大限までカスタマイズしたプログラムを提供するのがウチダ人材開発センタの魅力であり、それは他社に対しても同様です。内田洋行グループにはICTの導入支援や環境構築を担う多様な会社があります。私たちは、ウチダ人材開発センタが今後もICTを中心とした人材育成をリードする要としてグループ全体のボトムアップを図ってくれることを期待しています。そして、グループ全体を広い視野で俯瞰し、将来を担う人材を見つけて我々とともに育てていく。そんな“人づくり”のベストパートナーであり続けていただけたらうれしいですね。

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