DX化に向けたファーストステップとしてのITリテラシー研修
日清エンタープライズ
株式会社様
日清食品グループの物流部門の要としてDX化を推進されている日清エンタープライズ株式会社様。DX化によりビジネスを変革する、そのファーストステップとして「ITリテラシー(ハード/OSやネットワークとクラウドの仕組みの理解、情報セキュリティ)研修」を受講されました。今回は、取締役の内田様、物流部 次長の奥田様、総務部 課長の堂守様、情報システム課 課長の庄田様、情報システム課の竹本様に、研修を受けていただいた背景や研修の感想、そしてDX化のためのさまざまな取り組みや、今後のビジョンについてお聞きしました。
現在のお仕事の内容を教えていただけますでしょうか。
内田様
以前は日清食品のサプライチェーン全体を管理するSCM企画部にいました。現在は、日清エンタープライズで取締役として、より現場に近いところで物流業界のさまざま課題解決に取り組んでおります。
奥田様
物流部に在席しており、日清食品の工場や、弊社倉庫からの製品入出荷業務をマネジメントする業務に従事しております。元々はリフトマンで、現場上がりの管理職です。
堂守様
総務部に在籍しておりまして、最近は従来の業務に加えて、全社員を対象にした教育や研修を行う「人材育成」に注力しております。
庄田様
情報システム課でITの管理と運営を担当しております。情報システム課は業務改善的な役割を担っており、DX化のためのデジタル化も進めております。
竹本様
日清エンタープライズには2019年に入社しました。現在は、情報システム課で社内パソコンやトラブルの問い合わせ窓口を担当しています。また社内ツールの開発も行っています。
研修は貴社のどういった方々が受講されたのでしょうか?
庄田様
弊社にはIT担当の社員が何人かおります。彼らIT担当者を軸に、本社を含めた全国の事業所、物流センターの全部署からメンバーを選抜して参加させていただきました。
ITリテラシー研修を受けていただいた背景は?
内田様
日清食品グループとしては、今後DX化を推し進めて「生産性200%」を目標として掲げております。グループが推進するサプライチェーン構造改革における現場実行役を担い、メーカーと得意先、生産工場と物流拠点(倉庫)を結ぶ新しいシステムの開発を目指す弊社としても、社員のITリテラシーの向上は必須だったのです。
庄田様
弊社には情報システム課という部署があるのですが、2020年までは、ITに関連する業務のほとんどを情報システム課の担当者が行う組織運営でした。これまではWi-Fiの設定や多機能プリンターの設置といった細かな業務まで、情報システム課が担っていたこともあり、本来行わなければならないITによる業務改革になかなか注力できない状況だったのです。
奥田様
社員は、ついつい情報システム課を頼ってしまうために、自分自身のITスキルがなかなか向上しないという問題も抱えておりました。
堂守様
情報システム課の負担を減らすために、身近なトラブルなどはそれぞれの部署で対応できるようにする。そのために社員のITリテラシーの底上げを行う。それがITリテラシー研修を受講した目的の一つでもありました。
奥田様
管理職になるまでにITリテラシーを上げる研修はこれまで無く、管理職になった途端、ITスキルを求められ、慣れるまでに時間を要しておりましたので、このような研修があればと思っておりました。
研修を受けていただいた感想を教えていただけますでしょうか。
庄田様
率直にいって研修を受けて大変よかったと思っています。事前の打ち合わせの中で、研修における弊社の狙いを的確に理解していただいて、もっとも弊社に合った研修カリキュラムをオーダーメイドのように組んでいただくことができました。かなりわがままな依頼もしたと思います。具体的には、複合プリンターの導入と設定をマスターするといったことや、情報セキュリティ対策を学習するといった、実務ですぐに活用できる内容をいろいろと組み込んでもらいました。
堂守様
研修全体のプロセスも、まず研修の一ヶ月前にレベルテストを実施していただき、レベルに合った研修カリキュラムを設計して、細かなアレンジを加えていただきました。さらに、研修後のテストで習得度合を確認していただけるなど、始めから終わりまでサポートが手厚いなと感心しました。
庄田様
「内容が分かりやすくて勉強になった」、「もっと長い期間受講したかった」、「より詳しい内容のほかの研修も受けてみたくなった」、「ユーモアの要素もあって面白く勉強できた」など、研修後のアンケートでも受講者の評判は上々でしたね。
竹本様
私もIT部門の開催者側として研修を聞いておりましたが、基礎的なパソコンの構造から、ネットワークの仕組みやセキュリティの問題まで、知らなかった内容もあり、とてもよい勉強になりました。また今回の研修を受けたことで、もっと踏み込んで勉強したいと思うようになりました。次のより専門的なステップの研修にもぜひ参加させていただきたいです。
堂守様
集合研修では、今まで面識のなかったほかの部署の社員ともつながりができましたよね。その点もよかったのではないですか?
竹本様
そうですね。研修では、別の部署の社員とチームを組んで、一緒に相談しながら課題をこなすということも行いました。研修当日は、社員同士といえども初対面の方も多かったのですが、お互いを知ることで連帯感が生まれたと思います。それから、講師の方も親しみやすく教え方が大変熱心だったと思います。一つひとつの専門用語に対しても分かりやすく説明していただけました。
堂守様
弊社ではこれまで各部署間の横のつながりがあまりなかったですからね。研修後に社員同士のつながりができたことにより、それぞれの事業所でどういう取り組みをしていたか?といった情報共有ができるようになりました。分からないことがあればすぐに相談できる関係を構築できたという社員もいますし、会社全体の意識改革にもつながっていると思います。この流れはぜひ継続していきたいと考えております。
奥田様
堂守さんのおっしゃる通りで、今回の研修を通して、本社、各事業所間の交流の大切さを改めて感じましたので、来期は積極的に行っていこうと考えております。
研修後に成果や状況が好転したことがあれば教えていただけますでしょうか。
奥田様
事例を挙げますと、ある部署の研修を受講した者が、自力でドットプリンタを設置し、インストールまで実施することが出来た話があります。会社としての成長を実感しております。
庄田様
そうですね、確実に受講者のITリテラシーが向上したと感じています。その結果、情報システム課に対しての保守負担が明らかに軽減しました。現在はコロナ禍の中で他府県への移動が難しいときもありますが、情報システム課の担当者が各事業所に出張しなくても、それぞれの事業所の社員だけでシステム関連の作業が行えるようになったり、トラブルの解決ができるようになったりしたことは大きな成果ですね。 私たち情報システム課の負担が減ったことで、DX化を推進するためのマンパワーと時間的な余裕が増えるという好循環が生まれています。
堂守様
私は、社員一人ひとりの意識改革が起こったこと、そして社員同士で意見を出し合ったり相談したりすることが増えたのが一番の成果だと思っています。先ほども申し上げましたように、弊社はこれまで各部署間の横のつながりがあまりありませんでした。せっかく新しい情報やアイデアがあっても、広がらずに一ヶ所で止まっているケースが多々あったのです。最近は、セキュリティの問題やSNSの使い方に関しても、こんなサイトがあったとか、こんな動画が勉強になったとか、情報共有することが習慣化してきており、変わってきたな!と驚いています。
庄田様
社員に自分たちで変革していこうとするマインドが備わってきましたよね。その意識改革は本当に大きいです。これまでは、業務の改善案を考えてほしいとお題目のように唱えても、なかなか効果は上がらなかったのですが、最近は改善企画が各部署から自発的に上がってくるようになりましたからね。
竹本様
まわりの人にも「どんな内容だった?」と研修のことをよく聞かれました。説明すると「私も受講してみたい!」という人がけっこういて、社員の学習意欲が高まっているように感じます。
ほかにDX化における取り組みがあれば教えていただけますでしょうか。
内田様
テクノロジーを活用したサービスやビジネスの変革を行うこと、それがDX化ですが、弊社はその準備段階といえます。現在、取り組んでいるのは情報のデジタル化とその共有です。物流業界はまだまだハンコ文化が根強いですので、脱ハンコ化、そしてペーパーレス化を進めています。デジタル化するにあたり、自社だけではなく、ステークホルダーも巻き込んだWin-Winとなる改善を積極的に推進しています。お互いがデジタルのバトンをつなぐことでヒューマンエラーが減少すると考えています。
堂守様
また、一部ではありますが、業務の自動化も進めています。自動化する前は、終わらせるために、社員に残業を強いらねばならなかった業務もあったのですが、定時で終了できるようになりました。業務の自動化は労働環境の改善にも寄与しています。
奥田様
受領書の管理などでOCRを利用しています。1枚1枚目視で確認していたのですが、ITを活用することで、業務の生産性向上に大きく寄与しています。
庄田様
ペーパーレス化方針により、これまで年間150万枚の紙をプリント用に使っていたのですが、130万枚にまで削減できました。 また、輸配送をトータルに管理するシステム「ハコベルコネクト」を活用することにより脱FAXを進めています。物流業界は案件情報や、車両情報のやり取りをFAXで行っているところがまだ多いのです。FAXの場合、送った、届いていないというケアレスミスが稀に発生していました。トラブルを少なくし事務作業を軽減するためにもFAXのデジタル化は役立っています。
今後、DX化に向けてさらに取り組みたいことがあれば教えていただけますでしょうか。
内田様
日清食品グループの中で、そして物流業界の中で、さらに社会全体の中で、弊社の価値とは何なのか?今後のさらなる成長のために、その価値をどのようにアピールしていけばよいか?を改めて考え、そして戦略を練る時期に来ています。このような状況の中、より大切になるのがポイントを踏まえた人材育成です。ITリテラシーを向上させる研修などは、引き続き行っていきますが、ほかにもビジネススキルやコミュニケーション能力を高める研修、ビジネスメールの研修など、実用性に富んだ研修を活用していく予定です。さらに管理職にも、財務データの分析法や部下の育成ノウハウなど、その職務に合った教育を積極的に行っていきたいと考えております。
堂守様
次世代のリーダーを育成すべく、「マネジメント」や「コーチング」などの、「管理職向け研修」を計画しています。また、まだまだコロナ禍で難しい面もありますが、集合研修をできるだけ多く実施できればと思っています。社員同士の情報交換をもっと積極的にできるように取り組んでいきたいです。これまでと同様、トップダウンからの指示だけでは社員のパフォーマンスを充分に発揮させることは難しいですからね。ボトムアップからのアイデア発信や問題提起が、これからの会社の発展には欠かせないと思います。
今後の目標とビジョンを教えていただけますでしょうか。
内田様
日清食品グループは、人類を「食」の楽しみや喜びで満たすことを通じて社会や地球に貢献する 「EARTH FOOD CREATOR」をグループ理念に掲げ、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指しています。その新たな価値創造/向上のための一つの手段がDX化と考えています。例えば、デジタル化により従来の業務を効率化でき、現在の成果を半分の時間で達成できれば、もう半分の時間を新しい価値の創造のために使うことができます。 実務面でも、営業部門ならより多くのお客様との交流を図ったり、配車部門ならより安定的な業務が行えるパートナーをさがす等の業務改善のために考えたり、動いたりすることにさらに注力できると考えています。
庄田様
ビジョンなので夢的な話をすると、生産性を向上させて職場環境をより向上させたいですね。給与面や勤務条件を改善して、より多くの学生の方に「日清エンタープライズに入社したい」と熱望してもらえるような会社にしたいです。また、物流という業種は、運ぶ物が目的地に届いて当たり前のように思われていますが、常に物が滞りなく運べているということは、実はそこに大変な労力と技術が用いられています。今後は、物流システムをさらに進化させて、先ほど内田も申し上げましたが、日清食品グループ内での弊社の価値をさらに高めたいと思っています。
内田様
物流業界を取り巻く環境が急速に変化しています。また、人口減少により労働力も減っていくことを考えれば、社員一人ひとりの人材育成はますます重要になってきます。ウチダ人材開発センタ様には、今後もいろいろな提案をしていただいて協力して頂くことを大いに期待しておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。