「毎週の報告資料作成に、何時間もかかってしまう…」
「Excelファイルが重すぎて、開くだけでストレス…」
「データはあるのに、分析する時間がない…」
このようなお悩みはございませんか?
日々の業務で蓄積される売上、在庫、顧客情報、マーケティング施策の結果等のデータは、業務改善のヒントを秘めています。しかし、そのデータを「活かす」ためには、集計・分析・可視化といった作業が必要です。
ところが、これらの作業は手間がかかり、属人化しやすく、データの数や種類が増えれば、分析時にミスも起こりがちです。
そんな中、注目されているのが 「Microsoft Power BI」 というツールです。
Microsoftが提供するこのBI(ビジネスインテリジェンス)ツールは、データを自動で集計・分析し、視覚的にわかりやすく表示してくれます。
この記事では、Power BIを使ったことがない方に向けて、Excelとの違いや活用方法をご紹介いたします。

目次
Power BIは、Microsoftが提供するビジネスインテリジェンス(BI)ツールで、企業や組織がデータを集計・可視化・分析し、より的確な意思決定を行うために活用されます。Power BIは、Microsoftの「Power Platform(パワープラットフォーム)」という製品群の一部です。Power Platformは、現場の業務担当者でも“自分で”業務改善ができるように設計された、ノーコードツールで、Power BIは、「データを見える化し、意思決定を支援する」という役割を担っています。
| 製品名 | 役割 |
| Power Apps | 業務アプリの作成(フォームやモバイルアプリなど) |
| Power Automate | 業務プロセスの自動化(ワークフロー) |
| Power BI | データの可視化・分析(ダッシュボード作成) |
| Power Pages | 外部公開可能なWebサイトの作成 |
| Copilot Studio | チャットボットの作成 |
Power BIには、デスクトップ版(Power BI Desktop)、クラウドサービス版(Power BI サービス)、モバイル版の3種類のサービス形態があり、それぞれ機能に違いがあります。
簡単に違いをまとめると次のようになります。
- Power BI Desktop:データの取得・加工・レポート作成に最適。分析者向け。
- Power BI Service:共有・ダッシュボード・自動更新に強みがあり、組織的な利用に最適。
- モバイル版:閲覧専用。外出先での確認に便利。
|
Power BI Desktop |
Power BI Service |
モバイル版 |
|
| 利用環境 |
Windows PCにインストール |
Webブラウザ |
iOS / Android アプリ |
| データ取得 |
◎ Excel, CSV, DB, APIなど幅広く対応 |
△ ファイルは可、DB接続は制限あり |
× データ取得不可(閲覧専用) |
| データ加工 |
〇 クエリエディターで結合・変換等が可能 |
× 不可 |
× 不可 |
| レポート作成 |
〇 作成・編集可能 |
〇 作成・編集可能 |
× 不可 |
| ダッシュボード作成 |
× 不可 |
◎ 複数レポートを統合可能 |
△ 閲覧のみ |
| 共有 |
△ .pbixファイル共有のみ |
◎ 共有可能 ワークスペースやTeams、SharePoint等でも共有可能 |
△ 共有されたレポートのみ閲覧可能 |
| 自動更新 |
× 不可 |
◎更新可能 |
× 不可 |
ご自身の使用目的に合わせて使い分けることが重要です。
今回は代表的な3つの特徴をご紹介します!
①多様なデータソースとの接続
Power BIの大きな強みのひとつは、さまざまなデータソースと簡単に接続できる柔軟性です。企業内に点在するデータを一か所に集約し、統合的に分析できるため、「データがバラバラで活用できない」という課題に対応可能です。
データソースとしては、ExcelやCSVといったファイル形式、AccessやMySQLといったデータベース、Google AnalyticsやSalesforceといったクラウドサービス等、100種類以上のデータソースに対応しています。
② 直感的にデータを可視化
Power BIは、多彩なグラフやチャートを使って、データを直感的に可視化できます。ドラッグ&ドロップで簡単にグラフを作成できるため、専門知識がなくてもすぐに使い始められます。
代表的なビジュアルには次のようなものがあります。
- 棒グラフ・折れ線グラフ:売上や推移など、時系列データの変化を表現
- 円グラフ・ドーナツグラフ:構成比や割合を視覚的に把握
- ツリーマップ・ヒートマップ:階層構造や密度を視覚的に表現
- 散布図・バブルチャート:相関関係や分布を分析
③インタラクティブなダッシュボード
Power BIでは、ただグラフを並べるだけでなく、ユーザーが自由に操作できるインタラクティブなダッシュボードを作成できます。これにより、見る人が自分の関心に合わせてデータを絞り込んだり、深掘りしたりすることが可能になります。
インタラクティブ機能には、次のようなものがあります。
- スライサー(フィルター)
期間や地域、商品カテゴリなどを選択することで、表示されるデータをリアルタイムで切り替えられます。 - ドリルダウン・ドリルアップ
例えば「売上 → 地域別 → 店舗別」といったように、階層構造を掘り下げて詳細を確認できます。 - クロスフィルタリング
あるグラフをクリックすると、他のグラフも連動して表示が変化するため、データの関係性が一目でわかります。 - ツールチップ(ポップアップ情報)
グラフ上にカーソルを合わせると、詳細な数値や補足情報が表示され、理解が深まります。
Microsoft社が提供するサービスで、Power BIに似たツールとしてExcelがあります。ExcelがあればPower BIは必要ないのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、それぞれのツールは使用目的や得意分野が異なります。2つのツールがどう違うのか、表にまとめました。
|
|
Excel |
Power BI |
|
使用目的 |
表計算・データ加工・簡易分析 |
データの可視化・分析(加工) |
|
得意分野 |
数値計算、関数処理、個別データの管理 |
大量データの統合分析、ダッシュボード作成 |
|
可視化 |
静的なグラフやピボットテーブル |
動的なグラフやダッシュボード |
|
データ処理 |
数万〜数十万行程度が限界 |
数百万行以上でも高速処理が可能 |
|
データの更新性 |
手動更新が中心 |
データソースと接続して自動更新が可能 |
|
共有・コラボレーション |
ファイル共有が基本 |
クラウド上でリアルタイム共有・共同編集が可能 |
|
学習コスト |
比較的低く、誰でも使いやすい |
初期学習は必要 |
|
主な利用シーン |
日々の業務管理、簡易レポート作成 |
経営層向けレポート、マーケティング分析 |
「Excel」は、データの整理から計算、レポート作成まで、一人ひとりが自分の業務に合わせて使える自由度の高さが魅力です。
計算の柔軟性が高く、関数を用いた複雑な計算が必要な際は非常に有効です。また、使い方によっては業務管理や証憑類の作成にも用いることが可能です。
「Power BI」は、データの収集・統合・分析・共有までを一貫して行うことが可能で、表計算ソフトでは対応が難しい、大規模かつ複雑なデータの処理・可視化に特化しています。
データソースと接続することで、常に最新のデータをもとにグラフやダッシュボードを表示させることができ、データに基づいた意思決定をサポートします。
このように各ツールには得手不得手があり、必要に応じて使い分けることが重要です。大量のデータを用いた可視化や、データに基づいた戦略の検討や意思決定を行うといった際は、ExcelよりもPower BIを用いた方が有効です。
ここまではPower BIとはどのようなツールなのかご紹介いたしました。次のセクションでは、実際にPower BIの使い方をご紹介いたします。
今回はダミーデータを用いてデータを可視化する手順をご紹介します。簡単に可視化できますので、一緒に手を動かしてみましょう!(今回はPower BI Serviceを使用します。)
※ご契約中のライセンスやバージョン、利用環境等により、お使いいただける機能が異なる場合がございます。必ずご確認のうえ、利用を開始してください。
※操作画面は2025年11月時点のものです。
ダミーデータを用意します。CopilotやChatGPTといった生成AIや、ダミーデータを作成してくれるWebサイト等を活用して作成可能です。
また、Power BIのDesktop版では練習用にサンプルデータが用意されています。そちらを活用することも可能です。
今回は下記データを用意いたしました。
【生活家電の売上データ】
項目:取引ID / 日付 / 店舗名 / 商品ID / 商品名 / 価格 / 支払方法 / 年齢層
件数:500件

まずは、データの連携を行います。
①Power BIを立ち上げ、ホーム画面左上の「+ 新しいレポート」をクリックします。

②今回は、Excelでダミーデータを用意したので、「Excel」を選択します。

③データソースへの接続に関する画面が開くので、今回は「ファイルをアップロード」を選択し、ダミーデータをアップロードします。問題がなければ右下の「次へ」をクリックします。

④次に使用するデータを選択します。選択したら右下の「作成」をクリックします。

下記のようなレポートページが開けば連携完了です。

〇データの可視化
今回は、棒グラフとスライサー機能を用いて、データの可視化を行っていきます。
まずは、月ごとの売上を可視化します。
①画面右側、「視覚化」タブの「積み上げ縦棒グラフ」をクリックします。

②グラフで使用するデータを選択します。今回は月ごとの売上を可視化するため、X軸に「Month」、Y軸に「Σ価格」を設定します。
※Σマークは、Power BI上で集計が可能なデータであることを示しています。

すると下記のようなグラフが出来上がります。少し見づらいので、書式を修正します。

③まずは、軸のタイトルを変更します。画面右側、「視覚化」の「ビジュアルの書式設定」をクリックします。

④「X軸」という項目があります。プルダウンを開くと軸タイトルの編集ができます。
今回は「月」とします。

⑤同様にY軸のタイトルも変更します。今回は「売上」としましす。

⑥次にグラフタイトルを変更します。画面右側、「視覚化」の「ビジュアルの書式設定」→「全般」の順にクリックします。

⑦「タイトル」という項目があります。プルダウンを開くとグラフタイトルの編集ができます。
今回は「月別売上データ」とします。

次にグラフの数値がカンマ区切りで表示されるように設定します。
⑧画面左上の「データモデルを開く」をクリックします。

⑨画面右上、「表示中V」をクリックし、「編集」モードへ変更します。

⑩画面右側、「データ」タブの「テーブル」から「Σ価格」を選択します。

⑪「プロパティ」タブの書式設定の中に「桁区切り記号」という項目があります。こちらをONにします。

これで、グラフにカンマ区切りが適用されかなり見やすくなりました。

Before

After
次にスライサーを追加して店舗ごとの月別売上データを見れるようにします。
⑫画面右側、「視覚化」タブの「スライサー」をクリックします。

⑬スライサーの「フィールド」に「店舗名」を選択します。

これでスライサーの完成です。

スライサーに表示される店舗名を選択することで、棒グラフに反映され、選択した店舗の月別売上データを表示させることができます。

スライサーはページ内の関連するデータが含まれたすべてのビジュアルに適用されます。
ビジュアルごとにスライサーの適用ありなしを設定する際は、「メニューバー」の「ビジュアル対話」をクリックし、「相互作用を編集」をONにします。

すると、各ビジュアルの右上あたりにフィルターの適用ありなしを選択するボタンが表示されますので、こちらから個別に設定可能です。

さらにダッシュボードを作成します。
⑭作成したグラフにマウスを合わせて、左上「ビジュアルをピン留めする」をクリックします。

⑮「新しいダッシュボード」を選択し、ダッシュボード名を入力します。
⑯入力が完了したら「ピン留め」をクリックします。

⑰画面左のメニューから「マイワークスペース」をクリックします。

⑱先ほど作成したダッシュボードをクリックして開きます。

ダッシュボードに先ほど作成したグラフが表示されていることが確認できます。

ダッシュボードでは、複数のレポートで作成したグラフ等のビジュアルを集約し表示させることが可能です。レポートの中でも、日々定期的に観測が必要なビジュアルは、ダッシュボードに集約させると確認の手間を省くことができます。
このようにして、Power BIではデータの可視化を容易に行うことができます。今回ご紹介したグラフ以外にも様々なビジュアルやインタラクティブ機能が用意されておりますので、ぜひ触って体験してみてください!
ここまで読み進めていただいた皆様は、Power BIがどのようなツールなのかご理解いただいたと思います。しかし、事業内容や組織によって取り扱うデータが異なるため、用いるデータに対して最適なビジュアルやフィルターの設定等を検討していく必要があります。
いきなり高度な可視化を実行しようとすると、設定が複雑化したり、必要な機能を探したりと、時間がかかってしまい、挫折しやすくなります。まずは比較的シンプルなデータを用いて簡単な可視化から始めてみることをオススメします。
また、当社が提供する学習コンテンツもございますので、あわせてご確認ください。
[オンライン]Power BI入門コース ~そのレポートもっと簡単に作れます~
Power BIを使用し、直感的な操作で自分の使いやすいレポートを作成する操作方法を、実機を使って体験します。
詳細はこちら
https://www.uhd.co.jp/training/theme/dx/dx0005.html
eラーニング講座【Microsoft 365を学ぶシリーズ】 Microsoft365を学ぶ応用コース -Power Platform編-
Power Platformの各ツール(Power Apps、Power Automate、Power BI、Copilot Studio、Power Pages)の基本操作から、アプリ作成、身近な業務の自動化、データ分析、Teams上で利用可能なチャットボットの作成、Webページ作成までを体系的に学びます。
学習項目
- Power Platform
- Power Apps
- Power Automate
- Power BI
- Copilot Studio
- Power Pages
詳細はこちら
https://content.uhdx.jp/m-365-basics
今回は、Power BIとはどのようなツールなのかご紹介しました。また、ダミーデータを用いて、データの可視化についてもご説明しました。ご興味も持っていただけましたら、ぜひご自身で触って体験してみてください。
少しでも皆さんの業務のお力になれれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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