毎日の業務の中で、「またこの作業か…」と感じる瞬間はありませんか?
・週次の営業レポートを自動作成・送信
・セミナー等のイベント参加者にフォローアップメールを送信
・アンケートの回答を集計して報告書にまとめる
こうした「ちょっとした作業」は、1つ1つは数分で終わるかもしれませんが、毎日、毎週、毎月…と積み重なると、大きな時間ロスに繋がります。これらの作業は「考える」必要がない、いわば「やらなくてもいいかもしれない仕事」。このような単純作業を自動化できる仕組みがMicrosoft Power Automateです。
Power Automateは、プログラミングの知識が不要で、誰でも簡単に使い始めることができ、自分の代わりに「決まった作業」をこなしてくれます。
本記事では、Power Automateの基本から、実際にどんなことができるのかをご紹介します。
目次
Power Automate(パワーオートメイト)は、Microsoftが提供する業務自動化ツールで、メール、ファイル、チャット、データベースなど、日々の業務で発生する繰り返し作業を自動化することで、作業時間の削減を実現できます。Power Automateは、Microsoftの「Power Platform(パワープラットフォーム)」という製品群の一部です。Power Platformは、現場の業務担当者でも“自分で”業務改善ができるように設計された、ノーコードツールで、Power Automateは、「人がやらなくてもいい作業を、代わりにやってくれる」という役割を担っています。
製品名 | 役割 |
Power Apps | 業務アプリの作成(フォームやモバイルアプリなど) |
Power Automate | 業務プロセスの自動化(ワークフロー) |
Power BI | データの可視化・分析(ダッシュボード作成) |
Power Pages | 外部公開可能なWebサイトの作成 |
Copilot Studio | チャットボットの作成 |
今回は大きく分けて3つご紹介します!
① ノーコードツールで簡単な操作性
上記でも述べた通り、Power Automateは、プログラミングの知識がなくても使える「ノーコード」ツールです。画面上で「トリガー(きっかけ)」と「アクション(動作)」を選ぶだけで、自動化フローを作成でき、IT部門に頼らずとも、現場の担当者が自分で業務改善を進めることができます。
また、修正が容易であるため「実行 ⇄ 改善」のサイクルを速く回すことができます。
・トリガー
トリガーとは、自動化フローを実行するための開始条件(きっかけ)です。「新しいメールが届いたとき」「フォームの回答が送信されたとき」「スケジュールで定期的に実行」等、様々なトリガーがあります。
また、トリガーには下記3つの起動パターンがあります。
・自動トリガー:イベントが発生したときに自動で起動
・手動トリガー:ユーザーがボタンを押すなどして起動
・スケジュールトリガー:指定した時間や間隔で起動
・アクション
アクションとは、トリガーの後に実行される処理です。トリガーに対して「何をするか」を定義します。「メールを送信する」「Excelファイルにデータを書き込む」等、様々なアクションがあります。
② Microsoft及び外部サービスとの連携
Power AutomateはMicrosoftのサービスであるため、もちろんOutlook、Excel、Teams、SharePointなど、Microsoft 365の主要アプリとシームレスに連携できます。そのため、オフィスソフトとしてMicrosoftのアプリケーションを使用している場合は、日常業務に直結した自動化ができます。
また、その他にも500以上の外部サービスとの連携(コネクタ)が用意されており、自身の業務に合った自動化を進めることができます。
③クラウドサービスのためどこからでも利用可能
Power Automateはクラウドサービスのため、インストール不要かつ在宅勤務や外出先でも、自動化フローの作成・確認が可能です。また、作成したフローを社内で共有することもでき、組織全体の業務効率化につなげることもできます。
Power Automateでは、日々の業務の中にある「繰り返し」「ルール化された」「人の判断が不要」な作業を自動化できます。
ここでは、本記事の冒頭にあげた3つの業務について、自動化の例を簡単にご紹介いたします。
例1:週次の営業レポートを自動作成・送信
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現状(Before)
①毎週、担当者がExcelで売上や商談状況を集計
②グラフや表を作成し、PowerPointに貼り付け
③メールやチャットツール等で上司やチームに送信
Power Automateによる自動化(After)
①SharePointやExcelのデータをもとに、自動でグラフやレポートを作成
②Power BIやPowerPointに出力し、PDF化してメール送信
③毎週決まった時間に自動で配信
期待される効果
・レポート作成にかかる時間をゼロに
・送信忘れやミスを防止
・営業担当者は商談や提案に集中できる
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例2:フォーム回答者に自動でお礼メールを送信、社内関係者へ通知
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現状(Before)
①フォームの回答を確認し、手動でお礼メールを送信
②回答内容をコピーして、社内関係者に共有
Power Automateによる自動化(After)
①回答が送信された瞬間に、自動でお礼メールを送信
②回答内容を含む通知を、Teamsやメールで社内に通知
期待される効果
・回答者への対応が即時・自動化され、印象アップ
・社内共有も漏れなく行われ、情報伝達のスピードが向上
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例3:アンケートの回答を集計して報告書にまとめる
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現状(Before)
①回答フォームの内容を手動で集計用のExcelに転記
②グラフや集計表を作成
③PowerPointで報告資料を作成
Power Automateによる自動化(After)
①回答が送信されるたびに、自動で集計用のExcelに記録
②集計用のグラフもリアルタイムで更新
③PowerPointテンプレートに自動で反映
期待される効果
・集計・資料作成の手間を大幅に削減
・回答状況をリアルタイムで可視化
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※例1~3は、「期待される効果」を保証するものではございません。
こちらで取り上げたものはあくまで一例であり、ご自身の業務内容や社内ルール等に基づいて柔軟に自動化フローを構築可能です。
次のセクションでは、【例2:フォーム回答者に自動でお礼メールを送信、社内関係者へ通知】をもとに、実際のフロー構築方法をご紹介いたします!
【例2:フォーム回答者に自動でお礼メールを送信、社内関係者へ通知】について、実際のフローを構築します。簡単に作成できますので、一緒に手を動かしてみましょう!
〇事前準備
フォームへの回答を起点として、メール送信等を行いますので、事前にフォームとメールの定型文を作成します。
今回はMicrosoft Formsを使用し、お客様からの製品利用に関するお問い合わせを受け付けるフォームを想定して作成します。
※本記事では、詳細なフォーム作成手順は割愛いたします。
問題なくフォームが動作すれば準備完了です。
次は実際にフローを構築します。
〇フローの作成
①Power Automateを立ち上げ、ホーム画面左上の「+ 作成」をクリックします。
②今回は、テンプレート等を使用せずに作成するので、「一から開始」の「自動化したクラウドフロー」をクリックします。
③フローを識別するための名称を「フロー名」欄に入力します。今回は「製品問い合わせフロー」とします。
④フローのトリガーを設定します。今回はFormsが起点となるので、Microsoft Forms「新しい応答が送信されるとき」を選択し、「作成」ボタンをクリックします。
⑤フロー構築画面が開くので、トリガーをクリックし、詳細設定画面を開きます。
⑥作成するフローとFormsを連携するため、「Form Id」を設定します。
事前準備で作成した「製品お問い合わせフォーム」を選択します。
⑦次にアクションを設定します。トリガー下の「⊕ボタン」をクリックします。
⑧アクションを選択する画面が表示されるので、コネクタ別から「Microsoft Forms」を選択します。
⑨アクション「応答の詳細を取得する」を選択します。
⑩アクションの詳細を設定します。トリガーと同様に「Form Id」は「製品お問い合わせフォーム」を選択します。
⑪次に「Response Id」を設定するため、欄右端の「雷マーク」をクリックします。
⑫トリガー「新しい応答が送信されるとき」の「応答ID」が表示されるので、こちらを選択します。
フォームの回答に対して割り振られる「応答ID」を参照して、回答の内容を自動的に取得してくれるアクションです。
⑬次のアクションを追加します。アクション「応答の詳細を取得する」の下にある「⊕ボタン」をクリックし、コネクタ別から「Office 365 Outlook」を選択します。
この中から「共有メールボックスからメールを送信する(V2)」を選択します。
アクションの設定画面が開くので、詳細を設定します。
⑭「元のメールボックスのアドレス」にメールの差出人に設定したいアドレスを入力します。
※共有メールボックスのアドレスを使用するにはExchange 管理センターから設定が必要です。本記事では詳細な設定方法は割愛いたします。
※先で紹介する⑳の方法で代替することも可能です。
⑮次に「宛先」を入力します。右端にある「歯車マーク」をクリックし、「Use dynamic content」を選択します。
⑯アクション「応答の詳細を取得する」で取得したアンケートの回答内容を差込できるので、「メールアドレス」を選択します。
⑰「件名」を入力します。今回は、「【サポートセンター】お問い合わせありがとうございます」とします。
⑱本文を作成します。こちらでもアンケートの回答内容を差込可能ですので、組み合わせながらメール文を作成します。
これで、フォームの回答に対する自動応答メールの構築が完了です。
続いて社内への自動通知も設定します。
⑲アクション「応答の詳細を取得する」の下の「⊕ボタン」を右クリックし、「並列分岐を追加する」をクリックします。
⑳先ほどと同様に、「Office 365 Outlook」を選択します。「メールの送信(V2)」を選択し、件名と本文を作成します。
※「メールの送信(V2)」は、メールの差出人がフローを作成したアカウントに設定されます。
㉑画面右上の「保存」ボタンをクリックし、フローを保存します。
これで、フローの構築は完了です。最後にテストを実施し、動作確認をします。
㉒保存完了後、「テスト」ボタンをクリックします。
㉓「手動」を選択し、「テスト」ボタンをクリックします。
㉔画面が切り替わった後、作成したフォームへ実際に回答します。すると、フローのテストが実行されます。テストが終了すると画面が切り替わり、各アクションが問題なく実行できたか、実行にかかった時間が表示されます。何らかの理由により実行できなかった場合は、実行できなかったトリガーやアクションに対してエラーが表示されます。
下記が実際に届いたメールです。
・お客様宛の自動応答メール
・社内宛の通知メール
こちらで、自動化フローの完成です。自動化と聞くとプログラミングスキルが必要なのではないか、と思ってしまいますが、Power Automateは誰でも簡単に自動化を実現できます。ぜひオリジナルのフローを構築してみてください!
ここまで読み進めていただいた皆様は、自動化フローの構築方法までご理解いただいたと思います。しかし、組織や人それぞれ、使用するツールや業務内容が異なるため、独自にフローを検討・構築する必要があります。
いきなり複雑な業務を自動化しようとすると、設定や検証に時間がかかり、挫折しやすくなります。まずは「メールの自動送信」「ファイルの保存」など、シンプルで成果が見えやすい業務から始めてみることをオススメします。
また、当社が提供する学習コンテンツもございますので、あわせてご確認ください。
[オンライン]Power Automate入門コース ~Microsoft 365システム同士の連携をカスタムフローで自動化~
Microsoft365製品同士を連携する独自のフローを作成する方法について、実機を使って体験します。
詳細はこちら
https://www.uhd.co.jp/training/theme/dx/dx0004.html
[オンライン]業務効率劇的UP!Power Automate DesktopによるRPA活用研修
Power Automate Desktop無償版の提供により、Excelを使う感覚で、誰でもRPAを利用できるようになりました。RPAを活用すると、定型業務を自動化するだけに留まらず、人が行うことにより発生してしまうヒューマンエラーを排除することができます。
当研修では、Power Automate Desktopについて、RPAとは何か?から始め、応用的な使用方法まで実機を使って体験します。
詳細はこちら
https://www.uhd.co.jp/training/theme/dx/dx0006.html
eラーニング講座【Microsoft 365を学ぶシリーズ】 Microsoft365を学ぶ応用コース -Power Platform編-
Power Platformの各ツール(Power Apps、Power Automate、Power BI、Copilot Studio、Power Pages)の基本操作から、アプリ作成、身近な業務の自動化、データ分析、Teams上で利用可能なチャットボットの作成、Webページ作成までを体系的に学びます。
学習項目
- Power Platform
- Power Apps
- Power Automate
- Power BI
- Copilot Studio
- Power Pages
Power Automateは、業務の自動化を手軽に始められるツールですが、利用するにあたりいくつか気をつけたいポイントがあります。
最後にPower Automate利用時の注意点を3つご紹介します。
①社内のITポリシーを確認する
Power Automateは様々なクラウドサービスと連携可能なため、社内のセキュリティポリシーやアクセス権限に注意が必要です。特に、SharePointやOneDriveなどの共有領域を使う場合は、IT部門との連携を忘れないようにしましょう。
②フローの動作確認(テスト)を必ず行う
作成したフローは、必ずテスト実行して動作を確認しましょう。
意図しない動作や通知漏れがあると、業務に支障をきたす可能性があります。
チェックポイント:
・正しい宛先に送信されているか
・データが正しく取得・記録されているか
・トリガーが想定通りに動いているか
③自動化しすぎない
すべてを自動化しようとすると、人の判断が必要な場面まで機械任せになってしまっていることもあります。「人が確認すべきポイント」と「機械に任せられる作業」をバランスよく分けることが大切です。
今回は、Power Automateとはどのようなツールなのかご紹介しました。また、業務例を用いて、実際のフロー構築方法についても説明いたしました。ご興味を持っていただけましたら、ぜひご自身で触って体験してみてください。
少しでも皆さんの業務のお力になれれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。