数年前より、Z世代と呼ばれる新たな世代が社会へ進出しており、Z世代の持つ価値観や行動特性が多くの企業から注目を集めております。
一方で、採用・教育の担当部門や現場でZ世代と接する方々は、接し方やZ世代への理解に四苦八苦しています。そんなZ世代と共に働く皆様に、講師視点・現場視点・Z世代視点と3つの視点からZ世代の生態を解明しお届けします!
本記事では、研修講師から見たZ世代の特徴を調査していきます。現役で新人研修に登壇している講師3名へインタビューを実施いたしました。
前回の記事は下記よりご確認ください!
Z世代を解き明かせ!先輩社員とZ世代社員はどう考える? ~ 仕事への向き合い方とコミュニケーション ~
小林講師
株式会社ウチダ人材開発センタ ラーニングデザイン部の小林です。私は新卒でSEを経験したあと、小学校の教諭を経て現在はウチダ人材開発センタの講師として勤めております。新入社員研修では主にICT基礎研修のメイン講師として、Z世代と関わることが多いです。
高井講師
株式会社ウチダ人材開発センタ ラーニングデザイン部の高井です。新卒でシステム開発を行う企業に入社しました。その後、自治体の情報システム部門を経て、ウチダ人材開発センタで講師として勤めております。プログラミング研修等を担当しており、弊社が開催する新入社員研修「ウチダカレッジ」等でメイン講師・サブ講師としてZ世代と関わることが多いです。
熊木講師
株式会社TAROの熊木です。私は企業で総務・人事・経理として勤めているうちに、経営や営業に興味が湧き、25歳で個人事業主として独立しました。2018年から「ウチダカレッジ」で営業スキルを教えています。
Z世代とは、自社のインターンシップ生や、ウチダカレッジのメイン講師やクラスマネージャとして関わることが多く、年間数百名のZ世代と接しています。
熊木講師:
まずメイン講師ですが、航海における船長だと考えています。教室(船)単位の最高責任者であり、 主に研修を進行す
る役割を担っています。
サブ講師は船長が航海を進める上でのサポートをする航海士ですね。クラスマネージャは航海全体を俯瞰して見なが
ら、進行を調整することが役割だと考えております。クラスの雰囲気や受講者一人ひとりの変化を察知しながら、講師
や受講者と伴走し、受講者にとっては、心理的な拠り所となる存在だと思います。受講者と1対1で向き合い、お悩みや
相談にのることも少なくありません。
小林講師:
世間一般でも言われている通り、「合理性を求める」という点はすごく感じています。理不尽なことに対して、なぜこ
れをやらなくてはいけないのか?という疑念を抱きやすい傾向があると思います。これは決まっていることだからやり
なさい、ではついてこないので、なぜこれをやるのかといった趣旨説明が重要だと感じています。
高井講師:
小林さんのご意見は私も感じることがありました。また、近年の新入社員は、時代背景も関係しているかもしれません
が、Web上で講師へ提出する日報の中でご自身の意見を発信する方が多いように思います。その中で、意見や、不満、
悩みを打ち明けてくださる受講者さんもいらっしゃいます。
小林講師:
小学校では毎日「振り返りシート」というものを書いて、担任がコメントするという取り組みをやっていましたね。
「書く」という行為で意見を発信できる生徒もいるので、そういった文化に慣れた世代が、徐々に社会進出しているの
かもしれませんね。
熊木講師:
日報のお話に関連して、ウチダカレッジのクラスマネージャとしては、日報に書いてあることだけで判断しないように
しようということを意識しており、「4層考察法」による理解を重視しています。日報の文面上では不満として書いて
あることでも、よくよく話を聞いていくと、「もっと○○したい」自発性や意欲といった本質が隠れていることがある
ので、「見た目・外見」、「気持ち」、「本音・本心」、「本質」の4層で受講者を理解するようにしています。
文章自体は一見するとネガティブに書いてあったとしても、その中に受講者さんからのアラートが隠れていることもあ
るため、日報や受講態度等、目に見える内容で決めつけずにコミュニケーションをとることが重要です。
出典:一般社団法人一草一木 一草一木メソッド 4層考察法による自己理解(https://issou-ichimoku.com/)
高井講師:
本人たちが納得してやろうと思ったことに対する推進力はとても強いと思います。世間からは、仕事に対する
モチベーションが低いと言われることもありますが、なぜこれをやるのかということを筋立てて説明し、
動機付けしてあげることが、推進力を引き出すポイントかなと思います。
小林講師:
小学校の授業でも同じく動機付けを重要視しています。45分間の授業は「導入」、「展開」、「まとめ」の順で
構成されていますが、「導入」が最も重要です。5分間の導入で、生徒の授業に対するモチベーションを
どれだけ高められるかを大切にしています。「やれ」ではなく、「やってみたい」と思ってもらうことで、
やっと授業が始まります。そのため、Z世代はやれと言われて勉強や仕事に向き合ってきた我々とは異なり、
動機付けから行動することが染みついているのかもしれませんね。
熊木講師:
働く動機という点では、給料や役職にはあまり関心がなく、その仕事の社会的意義や社会貢献性を重視している節が
あると感じました。研修期間中、受講者さんから受ける質問は、講義の内容はもとより、我々講師の普段の
社会活動・事業活動に関する質問がとても多いです。そのため、「仕事のやりがい=社会貢献」という人も
増えてきているのではないかと思います。
また、Z世代は、デジタルネイティブ世代とも呼ばれ、情報の検索能力や情報への感度は非常に高く、
日々多くの情報を取り入れながら生活しています。そのため、様々な情報やデジタル技術を活用して効率的に
作業をこなす力を持ち合わせていると思います。一方で、調べたら何でも答えが出てくる環境で育ってきたこともあり、
営業の商談がシミュレーション通りに進まない等といった模範解答が通用しない場面の対応に苦手意識を持つ人が
多い傾向があるようにも感じます。
熊木講師:
加えて、学生時代や新社会人のタイミングでコロナが流行したことで、学校や職場に「オンライン」が普及し、
リアルなコミュニケーションが減少しました。そのため、波風を立てない、みんなと同じ答えに賛同しておく
といった傾向もあるかもしれません。
研修の中でも、自身の意見を発信することに抵抗感を持っていたり、ファーストペンギンになりたがらなかったり
するような シーンはよく見かけます。
スマホやSNSの発達によりどんどん自由に自分の意見を発信できる環境で育ってきた反面、
「何か言ったら叩かれる・晒される・はぶかれる」といった現実も日常的に目の当たりにしていることも、
影響を与えているのではないかと考えられます。
小林講師:
先ほどの特徴で熊木さんが触れていましたが、周囲からどう思われるかを意識してしまうところでしょうか。
空気を読んで自分が「出る杭」にならないようにしているところは新人研修中に感じるときはありますよね。
熊木講師:
そうですね。今年のウチダカレッジで、特に悩みを抱えて相談に来てくれた方は、講義中の挙手が多かったり、
グループワークで積極的に動いているような人だったりが多い傾向にありました。
話を聞いていると、「実はさっきの講義では、その場の空気を読んで周りに合わせて答えました。
実際の僕の意見は〇〇・・・・」や、「ある程度、模範回答っぽいことは述べたんですけど、本当のところは、
△△なんじゃないかと思っていて、、、」等、自分の意見に自信が持てず、本音を発信できない、もしくは、
発信したけど周囲からどう思われたか気になって不安になり悩んでいるということがありました。
高井講師:
答えを求めたがるような一面は感じました。ひたすらに講師へ「これはこういう事であってますか?」と、
何度も確認する方が複数名いらっしゃった印象があります。熊木さんが仰っていたように、探せばすぐ答えが
見つかる環境で育ってきたため、あらゆることに正しい答えを求めてしまい、悩むことがあるのではないかと
感じました。
熊木講師:
その傾向は強くなっているかもしれませんね。新人研修期間は学生から社会人への転換期だと
認識していることと、情報であふれた社会であるがゆえに、今自分が学んでいることと、実務とのギャップに
不安や悩みを抱えてしまうのかもしれません。
熊木講師:
ティーチング型ではなくコーチング型の教育が必要です。先ほどの会話でもあがりましたが、Z世代は周囲からの
評価を気にしてしまい、自分の意見を発信できず、内に秘めてしまう傾向があります。そのため、あらゆる
情報(答え)があふれている中で、出てきた情報をどう組み合わせるのか、それに対してどう感じたのかといった、
個人の考え方、感じ方を自身の意見として発信する力を伸ばす教育が今後より重要性を増していきます。
私が登壇するウチダカレッジの営業研修では、基礎理論の講義時間は最低限に抑えて、各班を営業1課、2課、3課…と
実践チームに見立てて、自分たちで考えて、自分たちで意見を出し合うことに比重を充てています。
高井講師:
ただ技術を教えるだけでは、講師として通用しなくなっていると感じます。いかに受講者が自身で気づきを
得られるか、興味関心を広げられるようにサポートできるかが講師に求められるのではないかと思います。
小林講師:
また小学校の話になるのですが、小学校でもコーチング型の教育というのは何年も前から取り組み
始めています。小学校の担任の先生の机は教室の前にあった印象が強いですが、最近は教室の後ろに
あることが多いです。これは、先生がファシリテーターに徹する動きに変わっているためです。
生徒同士の横のつながりを先生が構築し、一方的な授業ではなく「学び合い」を促進することが
重要とされています。
そのため、社会人になって一方的に技術を教わるような研修に、違和感をもつZ世代は多いと思います。
一方的な講義では、リアルでもオンラインでも集合して受ける意味がないですからね。Z世代を育てる
身としては、ティーチャーではなく、コーチ、ファシリテーターである必要があるのではないかと思い
ます。