第四次産業革命といわれる現在、様々な業種の企業でDX推進やIT活用が叫ばれています。
情報システムや、DX推進室といった部門の方々は、経営陣からのビジネス変革への要望にどう応じたらよいか、頭を悩ませていらっしゃるかもしれません。
この記事では、情報システムやDX推進室でお仕事している方に向けて、ITの専門家ではない一般社員全員のITスキルをどのように把握し、底上げしたらよいかについてご説明しています。
目次
ITスキルを身に着けたい、ITリテラシーを強化したいなどと言いますが、スキルとリテラシーは何が違うのでしょうか?
スキルとは、日本語で技能や技術を指します。つまり、あることを遂行できる力のことです。ITスキルとは、情報技術の分野で業務を遂行していく力があるということになりますね。
ITユーザーであれば、Office系のソフトを使って業務を遂行できればITスキルがあるといえるでしょう。
ITスペシャリストの場合は、要件定義、設計、開発、テスト、運用、保守といった開発フェーズや、ネットワークやデータベースといった個別の専門領域、プログラミング言語などに応じて、様々なスキルが求められます。
では、リテラシーとは何を指すのでしょうか? そもそもは読み書きできる能力のことです。ITリテラシーといった場合、セキュリティについて理解しており、コンピューターの基本操作やインターネットの利用などができるといった、基本的な知識とスキルを総合的に指しています。
ITスキルは専門的なものもあるため、すべての人に求められるわけではありません。一方、ITリテラシーは、仕事をするだけでなく、現代で生きていくために必要な力だといえるでしょう。
ITスキルテストとは、IT関連のスキルや情報リテラシーを評価・測定するテストのことです。全社員に実施することで、誰がどの程度のITスキルを持っているのかを可視化でき、得意な部分を活かした配属を行ったり、弱い部分を成長できるよう教育したりといった活用方法が考えられます。
ITスキルテストには、いわゆる資格試験と、どの程度のスキルなのかを測定するアセスメントの2種類があります。
資格試験は、合否判定により、対象とするITスキルが一定のレベルであることを証明してくれます。
アセスメントは、合否判定はなく、個人や組織が持っているITスキルを比較できる結果を得ることができます。
そもそもITスキルとは、どんなスキルなのでしょう? ITスキルといっても、非常に多岐にわたっています。例えばeメールを送る、お店をインターネットで検索して予約をする、エクセルやパワーポイントを使うといった身近なものから、Webサイト開発、アプリ開発、プログラミングといった専門的なものまで存在しています。
業種や部門、職種によって、求められるITスキルが多様なものになることは想像できると思います。そのため、目的に合わせたITスキルテストを選ぶことが重要です。
IT系ではない事業会社の情報システム部、DX推進部の方が、「全社員のITスキルやリテラシーをチェックしたい」という場合、どのような目的があるでしょうか?
日本全体でDXが実現できなれば、2025年から2030年までに最大12兆円/年の損失が発生すると言われています。(経済産業省「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~)
このような大きな変化に対応するためには、自社のデータの活用を見直したり、システムを刷新したりすることが不可欠でしょう。特にSAPのERPがサポート終了することで、システム刷新が待ったなしの会社もあると思います。
このような変化に対し、抵抗する社員の方もいるでしょう。しかし、システム刷新は現場の理解がなくては上手くいきません。
ITスキルテストを全社員に実施すれば、どの部門にどの程度のITスキルを持った人がいるのか、見える化できます。現状の全社員のITレベルを把握し、DXを実現するためにどうしたらよいのか、考えていくということになるでしょう。
たとえば「セキュリティに関するトラブルが多いのは、社員の知識が不足しているからではないか?」「業務効率が上がらないのは、社員がパソコンやソフトを使いこなせていないからではないか?」「新しいシステムを導入しようとしているが、うちの社員は使いこなせるだろうか?」というようなお悩みを感じているかもしれません。
このような細かな課題についても、ITスキルテストによって解決への糸口が見つかるのではないでしょうか。
こうした具体的な課題を解決していくことは重要ですが、それだけでなくDXによってどのようなビジネスを実現したいのかという目的に繋がっていることを忘れないようにすることが大事ですね。
・第四次産業革命で変化する社会
第三次産業革命では機械化が進みました。今は第四次産業革命といわれており、ここではDX、つまりデジタルトランスフォーメーションによって大きく産業構造が変化しつつあります。
いまやITは私たちの生活に溶け込んでいます。ビジネスにおいても、IoTやビッグデータ、AIといった技術を取り込んで、業務の効率化や生産性の向上、今までにない商品・サービスの開発などを目指すことが求められているのです。
そこでは、書類を紙からデータにする、あるいは会議をリアルからオンラインにするといったデジタル化では足りず、デジタル技術でビジネスモデルや働き方を根本から変えていく必要があるのです。
世界ではデジタルを活用した新しい商品・サービスが次々と生まれています。このままでは国内向けの商品・サービスも、海外製のより利便性の高いものに置き換えられてしまいます。それらに打ち勝つためには、この変化を乗り越えていかなくてはなりません。
・ITエンジニアだけでなく、ITユーザーにも必要不可欠なITスキル
経済産業省「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~によると、2017年には情報システム部門とベンダーにおけるIT人材の比率は3:7だったそうです。非常に外部ベンダーへの依存度が高いことがわかります。
それを欧州並みにするためには、情報システム部門+ユーザー(全事業部門)とベンダーの比率を5:5まで上げる必要があるそうです。
総務省「令和3年版 情報通信白書」によると、「外部ベンダーへの依存度が高く(中略)ユーザー企業では、組織内でICT人材の育成・確保ができていない」状態だそうです。
その原因としては、過去の成功体験、デジタル化への不安感・抵抗感、デジタルリテラシーが十分ではないという3つがあげられています。
外部ベンダーへの技術依存度を下げるためには、社内のITエンジニアの存在はもちろんのこと、導入される新しいシステムに対応していく一般社員にもITスキルが求められているということです。
スキルチェックしたい内容をカバーした資格を持っていれば、その人のスキルが一定のレベルに達していることが分かります。また資格取得までいかなくても、どの程度のスキルを持っているかが分かるテストも存在しています。
ここでは一般社員向けの資格・テスト5選を紹介します。
このほかにも様々なベンダーが独自の資格や診断を行っています。
名称 | 主催 | 特徴 | テスト方法 | 時間・費用 |
ITパスポート | 国家資格(情報処理推進機構) | ITを利活用するすべての社会人・これから社会人となる学生が備えておくべき、ITに関する基礎的な知識が証明できる国家試験。ストラテジ系(経営全般)、マネジメント系(IT管理)、テクノロジ系(IT技術)の分野について出題されます。 |
47都道府県のテストセンターで実施。 会場により実施日・時間が異なる。 |
120分 7,500円 |
ICTプロフィシエンシー検定試験(P検) | ベネッセコーポレーション | 全てのIT利用者を対象とした、総合的なICT 活用能力を問う資格。1級から5級まであり、3~4級は中高生も受験しています。 | 全国の認定試験会場で実施。会場により実施日・時間が異なる。 |
例:4級 50分 3,060円 |
インターネット検定 ドットコムマスター | NTTコミュニケーションズ | インターネットの基礎知識から実践的なICT知識を証明する資格。BASICとADVANCEがあります。BASICではインターネットを安全に使う上での知識を対象としています。 | テストセンター受験、インターネット受験、マークシート一斉受験(団体のみ)など様々な方式に対応。 |
例:BASIC 45分 4,400円 |
マイクロソフト オフィススペシャリスト(MOS) | ベンダー資格(マイクロソフト) | Word、Excel、PowerPointなどの利用スキルを証明する資格。各アプリのバージョンごとに一般とエキスパートがあり、実技試験があります。事務職には必須となるアプリのスキルを証明できます。 | 一斉試験と随時試験があり、どちらも全国の試験会場で実施。会場により実施日・時間が異なる。 |
例:Excel(一般) 50分 10,780円 |
IT・DXレベル測定 i測 | ウチダ人材開発センタ | 全社員のITリテラシーとDX推進に必要なDXリテラシーを、経産省のデジタルスキル標準を参考に最低限できて欲しいレベルからITパスポートレベルまで可視化できるアセスメント。 | PC、インターネット環境があればいつでもどこでも受診可能。 |
例:Basic版 60分 3,000円 |
・メリットと注意点
ITスキルテストを全社員に実施したときのメリットと注意点を説明します。
● メリット | ● 注意点 |
社員一人ひとりのスキルレベルの可視化 社内のデジタル人材を発掘・育成 人的資源の最適配置 レベルに応じたITスキル教育の実施 DXを推進する上での基盤が整備できる |
妥当性と公平性の確保 実務能力との乖離が生じる可能性 受験者のモチベーションへの影響 全社員に求める適切なレベルの検討 ITスキルを全社員へ求めることへの抵抗 |
・注意点への対策
ITスキルテストを実施する場合は、まず妥当性と公平性のあるテストを選定しましょう。
また全社員の不安や抵抗を減らすために、テストを実施する前に次の点を整理し、周知しておくとよいでしょう。
- 会社の置かれている状況、ビジョン、ITスキルテストの目的
- 全社員のスキルを把握したいということ
- テストの結果の活用法や業務や業績への影響
- 基準レベルに達しなかった場合のフォローアップ(研修等)
この記事では、ITスキルとリテラシーの違いや、何のためにそれらの能力を測るのか、ITスキルテスト導入の注意点などについてご説明しました。
情報システム部門や、DX推進室の皆さんは、新たなビジネスシステムの企画やどのように浸透させ、業務効率や生産性を向上させればよいのかについて、日々お考えのことと思います。
しかしDXは、1つの部門だけでなしえることではありません。全社一丸となって取り組む必要があるのです。
そのための第一歩として、全社員のITスキルテストを行ってはいかがでしょう。
【IT・DXレベル測定サービス「i測」】
「i測」の詳細は下記よりご確認ください。
https://i-soku.jp/