DX推進に求められる「業務改善・改革」「価値創出」「新規ビジネスモデルの構想と実現」「推進部門の在り方」「部下・メンバーの育成」について、悩んでいらっしゃいませんか。自ら教育分野に問題意識を抱き起業したのち、長年、自治体や教育機関でのアントレプレナーシップ教育やキャリア教育に携わるグローバブル社の樋口氏がその重要なエッセンスを3つのテーマでまとめました。
第一弾 | 「デジタル活用」の前に知っておくべき新規事業企画・新商品開発の基本 |
第二弾 | 「今の仕事」って何?AI導入の前に考えなければいけないこと |
第三弾 | 「主体的に仕事を創る人」を育てる組織やその人材育成方法 |
第二回目は、【「今の仕事」って何?AI導入の前に考えなければいけないこと】と題し、昨今デジタル技術の活用として特に注目されているAI技術の活用について、その導入時にぜひ知っていただきたい点を解説したいと思います。
今回は・・・
「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を推進するにあたって、「デジタル化」「デジタル活用」は大事な要素となりますが、その技術に対する理解が伴うことによって、適切な導入ができると考えております。
「生成AI」の台頭によって、最近では日常業務や生活の中でも様々なAI技術の活用がみられるようになりました。またAI技術を活用して、今後のビジネス創出を考える、といった組織もあると思います。
今回はそのAI技術に焦点を当て、「生成AI」を始めとした様々なAIを活用する、業務の補助として導入する際に考えておかなければならないことについてお話します。
■AIとはなにか
〇AIとはなにか
「AI」とは、Artificial Intelligenceの略称で、「人工的な知能/知性」という意味です。
その言葉がはじめて用いられたのは、1956年のアメリカのダートマス大学で開催されたダートマス会議です。
そこで、計算機科学者/認知科学者のジョン・マッカーシー教授が「知的なコンピュータプログラムを生み出す科学や技術」だと定義しました。
AIは、大量のデータから学習し、問題を解決したり、画像や音声を理解したりする能力を持っています。
お掃除ロボットやスマートスピーカー、車の自動運転、翻訳機能など、私たちの生活において身近な存在になってきています。
〇AIをビジネスで活用するメリット、デメリット
まず、AIをビジネスで取り入れる代表的なメリットをいくつかあげてみましょう。
・業務効率化で労働力不足を解消
AIを上手に取り入れることによって業務効率化が実現し、近年話題となっている労働力不足を解消できるという点が挙げられます。
・生産性の向上
AIは、業務の自動化/効率化を通して、作業速度と正確性を高めることができます。
そして、人間の体力には限界がありますが、AIは疲れ知らずで24時間稼働することができます。
・人為的ミスや事故の減少(=安全性の向上)
AIは、正確で一貫性のある判断を瞬時に実行することが可能です。
例えば、自動車の自動運転システムでは、AIが状況をリアルタイムで監視し、迅速かつ正確に判断を下していきます。
一方で、AIを導入、活用する際のデメリットもあります。その代表的な例をいくつか挙げてみます。
・情報漏洩のリスク
AIシステムは、分析を行う際に重要な情報や個人情報にアクセスすることがあります。
不適切なセキュリティ対策やシステムに脆弱性がある場合、悪意のある第三者がシステムに侵入し、データを盗んだり、改ざんしたりといった可能性が高まります。
・リスクマネジメントにおけるリスク
AIシステムは複雑で、その動作や意思決定プロセスを完全に解明することが難しい場合が多々あります。
AIがどのように学習し、どのように意思決定をしたのかが可視化されていない、いわゆる「ブラックボックス化」している場合、情報漏洩などのインシデントが起こってしまった時の原因の特定や適切な対応が困難になります。
〇AIの得意・不得意
次にAIを活用する場合に、AIの分類による得意・不得意の分野について、理解しておきましょう。
AIの分類において、主に2つの考え方があります。それは、「シンボリックAI」と「統計的AI」です。
「シンボリックAI」は、ルールベースのAIとも呼ばれ、事前に与えられたルールや情報に基づいて論理的に推論を行い、問題解決や意思決定を行います。
シンボリックAIでは、論理的な推論、知識表現、推論エンジンなどを活用しています。
例えば、医療現場において患者の年齢や体重などの情報や症状に基づいて、病気の予測を行うシステムなどがあります。
このようにシンボリックAIは、既知の情報やルールに沿った問題解決は得意ですが、一方で現実世界の複雑な問題や不確実性を扱うことには適していません。
「統計的AI」は、データからパターンや関係性を見つけ出すことを得意としています。
大量のデータを確率や統計学の考え方を用いて学習し、法則や関連といったパターンを探し、予測モデルを構築します。
このアプローチには、機械学習やディープラーニングなどの手法がよく使われます。
最近話題の「生成AI」もこの「統計的AI」の中の一つと言っていいでしょう。
シンボリックAIは、ルールに基づいて問題解決や意思決定を行うため、結論に至るまでのプロセスが透明です。
しかし、人間が事前にルール(明確で厳密な論理構造)を作成しておく必要があります。
一方、統計的AIは、大量のデータからパターンを見つけ出すことに優れ、複雑な問題の解決に向いていますが、
結論に至るまでのプロセスがブラックボックス化してしまうという問題があります。
最近では、より柔軟な問題解決や意思決定に活用するために、シンボリックAIと統計的AIのアプローチを組み合わるハイブリッド型も試されています。
どちらの考え方にも、利点と欠点がありますので、それらの特徴を理解しておくことが必要です。
■AI導入の流れ
ここからは、AI導入を行うための流れを整理していきます。
新しい技術やサービスを導入するためのプロセスとして、設計と検証がありますが、ここでは「設計」について主に触れていきます。
この設計工程では、AIを導入する目的、導入する範囲、進め方などを定め、次の段階である検証工程の準備を整えます。流れは以下のとおりです。
- AI導入の目的・目標設定
- データの確認
- 実務における活用イメージの検討
- 体制/費用の検討
1.AI導入の目的・目標設定
まず、AI導入の目的・目標設定です。
現状の業務における課題を洗い出し、その中から、AIを導入すれば解決できそうな課題を探します。
もし見つかれば、その課題を解決することがAIを導入する目的となります。
もちろん、組織の事情などもありますが、課題が多くある場合は、改善の効果が大きいと予想される課題や着手しやすい課題を優先するのがコツとなります。
課題の整理に取り組んだ後は、その課題が現在どのような状態になっているのかを定量的に把握します。
AIを導入した後に比較できるように、課題の頻度やその影響、性質、要因などを詳しく記録しておくことが重要です。
2.データの確認
次は、データの確認です。
まず、現状で社内に存在するデータをできるだけ収集・整理し、AIの導入に必要だと思われるデータを確認します。
必要に応じて、他部門に協力を呼びかけることで、より多くのデータが集まります。また、今後必要になると予測されるデータがあれば、それらのデータの収集方法と保存方法を検討していきます。
そして、必要だと思われるデータが社内に存在しないことが分かった場合、世の中のオープンデータなどの活用も検討します。
3.実務における活用イメージの検討
次に、実務における活用イメージの検討です。
AIを導入した際に混乱をきたさないように、実際の業務との適合を検討していきます。
例えば、ある業務プロセスの課題をAIで解決するとして、AIの導入がそのプロセス全体に及ぶのか、そのプロセスの一部のみに導入するのかを明確に定めます。
また、現状の業務プロセスを踏まえて、AIの使用手順や出力されたデータの使用範囲、保存方法などを定めていきます。
4.体制/費用の検討
実務における活用イメージの検討が済んだら、費用の検討に移ります。
まず、どのような社内体制でAIの導入に取り組むかを決めます。
通常、AIを導入する際は、プロジェクトチームが発足されることが多く、AIの導入を外部に委託する場合は、委託先を選定する必要があります。
外からは顧客の業務プロセスを把握できないため、業務プロセスを反映せずAI導入を進めてしまうこともありうるため、委託先と業務プロセスを共有することはとても重要です。高品質なAIでも、業務プロセスに適合しなければ意味がありません。
次に初期費用を見積ります。AIベンダーに委託する場合は、その費用の見積りも必要です。
導入する際に必要なプロセスについてお話をしました。
このプロセスに関しては、デジタルツールやクラウドサービス等の導入についても同じような事が言えると思います。いずれにしても今回のプロセスで示した通り、自業務の流れの洗い出しや体制構築が重要になってきます。その部分が不足していると、お金をかけて導入しても運用がうまくいかなかった、使われない、などの状態に陥ってしまうことがあります。まずは前向きに活用を検討することから始まると思いますが、今回の記事も参考いただき導入に向けた準備についても同時に考えていただくことをおすすめします。
次回は、「人」に目を向けて、DXを推進する組織で活躍する人材の育成や組織の在り方について、お話します。
話し手:株式会社Globable 代表取締役 樋口 匠 (Takumi Higuchi) 氏
運用系エンジニア・学習塾教室管理者を経て、2012年、演習中心の企業研修を提供する研修会社(株)グローバブルを創立。社会人向け研修だけでなく、大学の地域連携・企業連携のサポートや自治体の起業家支援イベントの運営、中学生・高校生の課題解決教育・キャリア教育などにも携わる。
創業当初より研修設計・教材開発を担当しており、その経験を元にした新商品企画やビジネスプラン作成教育を小学生から社会人まで広く提供している。
インタビューア、記事制作:株式会社ウチダ人材開発センタ 販売促進課
●関連研修
厚生労働省委託事業 株式会社ウチダ人材開発センタ主催
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