東京両国、国技館の近くにオフィスと研修室を構える弊社は、大相撲の場所毎の賑わいに季節を感じ、力士の方々の往来も馴染みの風景です。愛着ある地元にちなみ、人材育成に関するトピックスを「ウチダ部屋」からの発信という趣向でお届けします!
~シニア世代の活躍支援と組織の活性化とは~
(2023年2月発行)
今回のお悩み事
当部門はシニア世代の割合が比較的多く、若手・中堅と同じく活躍を期待している。「モチベーション」や「パフォーマンス」の面で時に個別のマネジメントの必要性を感じているが、他のメンバー同様の対応では不適当なのではないか、との心配もある。
シニア世代が現在持つ能力を発揮し活躍するためにマネージャーとしてどのような心掛けと対応が必要だろうか。また他のメンバーへの影響力の面で気を付けるべきこととはなんだろうか。
今回の決まり手!
シニア世代といっても特に何歳から何歳までといった基準はないようですが、何となく55歳以降の方々を指すことが多いようですね。多くの組織からお話を伺うと、シニア世代を迎え、自身の経験・価値観を軸に、タスクを通して現役世代を支援したり、あるいは若手人材の育成に一定の役割を演じたりと、生き生きと自身の新たな役割・存在価値を獲得している方もいらっしゃれば、組織からの期待に対するご本人のパフォーマンスの発揮について悩んでいる方も多くいらっしゃるように伺います。
そこで当社でもご活躍中のシニア世代の方のお話を聞いたり、その方々への期待を考えたりしながら、マネジメントで意識する点を挙げてみました。
■決まり手1 「積み重ねてきた」経験を重視しよう
■決まり手2 ご本人の「生きがい」や「やりがい」への結びつきを意識しよう
■決まり手3 周りから「尊重される人物」になる支援をしよう
■決まり手1 「積み重ねてきた」経験を重視しよう
人それぞれ職務内容や役割は異なったと思いますが、組織の一員として多くの経験をしてきたことは間違いありません。その経験から本人が得たノウハウは時代やその場面に合わせたものなので、そのままの今後に活用していくのは思いの他、難しいものです。しかしそこで「自身の経験は今の時代、活かせる場がない」と諦めてしまうのは当人のみならず組織にとっても余りにもったいない状況を生み出してしまいます。
そこで、シニア世代のご活躍を考えるにあたり、まずその方が培ってきた経験やノウハウを整理し、その要素を取り出すことが大切になってきます。
「今まで様々な事を経験してきたが、それにはどんな能力を活かしてきたのだろう」
「この能力が活用できるフィールドは、これからはどこにあるだろう」
自らそう考え、活動する場面を探すことができる、あるいは、自らそれを創り出すことができる。決して簡単なことではないですが、自分の経験やノウハウを今後どのようなことに活かすことが出来るか、まず自分で考えてもらわねばなりません。
長いキャリアの中でも、特に苦労し試行錯誤して成し遂げた経験は、その過程で思考を重ねノウハウを培ってきた、その方自身の強みです。積み重ねてきた経験でなければ、自信をもって「自分の経験・ノウハウから培った能力」と言うのは難しいでしょう。そうした経験から能力要素を少しでも多く取り出すことは、マネージャーとして支援できることでもあります。経験をじっくり聞いた上で、ご本人だけでは気づかない能力要素を見つけ出し、活躍できるフィールドを一緒に見つけてあげることが大切です。
■決まり手2 ご本人の「生きがい」や「やりがい」への結びつきを意識しよう
ご本人の活かせる能力要素が見えてきた時、マネージャーが出来ることは、その方の能力を活かせるフィールドを用意し、自ら活動し始めるように促し、全力で応援し、そして求められる支援をするだけです。
しかしながらそう簡単にはいかない場合もあるかもしれません。それは、人によっては、仕事は会社や組織から「与えてもらうもの」「降ってくるもの」という意識が根付いていることがあります。また、シニア世代にとって、今までと同じような「仕事」を、同じような「やり方」で行うというのは、体力気力共に不安があり、腰が重くなることもありがちです。
それらを凌駕して進めていくには、「仕事」として捉えるというよりは、その方が「生きがい」や「やりがい」といった「テーマ」を今後の仕事に感じられるかどうかです。
だからこそ、マネージャーもその意識をもって、シニア世代の方に接し、自らが動き、自身の「生きがい」や「やりがい」を見出しながらものごとに向き合っていくように支援することが重要なのです。
そのような活動をお互いができれば、多少のハードルがあったとしても、シニアの方も新しい知識やスキルを身に着ける意欲がわき、物事に前向きに取り組むことができ、組織でのご活躍が期待できるのではないでしょうか。
繰り返しになりますが、マネージャーは、シニアの方の「生きがい」や「やりがい」を見出した仕事で、組織に貢献できる力を肯定し、鼓舞し、後押しする、そのような精神が重要になってきます。
■決まり手3 周りから「尊重される人物」になる支援をしよう
シニア世代に対して「人材」という言葉で表すのは、実はあまりしっくりしないと思っています。勝手ながら活躍されている方は「人物」という表現方法の方がより当てはまるのではないかと考えています。そう考えるとマネージャーとして協力できることは決まり手1,2くらいまでで、ここからは、ご本人が「組織やチームの中で、どのような存在でいたいか」「周りからどのような存在として認めてもらいたいか」という意識が非常に重要になってきます。
多くの方は「尊敬されたい」と思う事でしょう。ただ、それは中々高いハードルに思います。とした時に、ぜひ「周りから尊重される人物」であってほしいとマネージャーの方は伝えていただきたいと思います。
マネージャーは周囲のメンバーがそのシニアの方を尊重するきっかけとなるような仕事での役割・タスクを用意することや、重要な場づくりに向けて動く必要があります。
経験が生かされ、本人のやりがいと直結するテーマであれば、周囲が尊重するに値する行動が期待できるように思うのです。
ご本人の行動や表現方法はシニア世代のその方によります。ある方にとってみたら、「今までの経験を活かし組織や周りの役に立とうという意識を持ち、泥臭いこともしっかりやる」ことかもしれませんし、「視座を高く持ち自分も動きながら今までの経験を活かしたアドバイスもしっかりしていこう」ということかもしれません。
若手中堅世代のようにバリバリと仕事をする、ということではないかもしれませんが、自身の良さ、役割を全うできているな、と周りが感じられているかどうか。その人それぞれがどのように振る舞い、役割を全うし、行動することで、信頼を重ね、組織の役に立とうとしているか。
マネージャーがそういった視点でご本人を観察し、その表現を汲み取りながら時に頼りながらバックアップする。そういったマネジメントの積み重ねが、周りのメンバーからのシニア世代への信頼を集め、更なる個人の活躍の場を広げ、組織の活性化に繋がると考えています。
今回の決まり手3つは、各組織やマネジメントにて努力すべき内容ではありますが、シニアを迎えるご本人の心のスイッチの変換も避けては通れない重要なステップです。
過去からの自身の実績・能力を振り返り、今後の自己実現へのストーリを描き、そしてビジネスパーソンの最終段階の生き方を決めていくステップであることを互いに認識することも大切です。
企業によってはシニアを迎える前段階で、そういったシニアキャリア研修のような形でご提供される機会も増えてきているようです。
現在もそうですが、今後はよりシニア世代の活躍が現場の大きな力となります。
ぜひご本人たちの「やりがい」「生きがい」との結びつきから本気度高く目の前のものごとに向き合い、ポジティブな影響を与えてくれる方々が一人でも多くなりますよう、またそれによって組織の活性化にも繋がるよう、願っています。
シニア世代の活躍支援や組織活性化に悩んだら、今回ご紹介した「決まり手」も参考にしていただけると幸いです! どすこい!